「芋っぽさ」まで武器にする。蒔埜ひなが“自分らしさ”を手放さない理由

蒔埜ひな

「垢抜けなきゃ、って思う瞬間はあるんです。でも、全部を平均点に寄せたら、私じゃなくなる気がして」。

蒔埜ひなは、自分のことを「昔から芋っぽい」と笑いながら言う。だがその言葉は、卑下ではない。TikTokでは飾らないことを意識し、何が刺さるかわからないからこそ「数を出す」——そうして地道に積み重ねてきた先に、バズがいくつも生まれている。

一方で、彼女のバックボーンには、競合校でのバレーボール漬けの日々、スランプ、そして「中途半端では諦めたくなかった」という強い意志がある。さらに、芸大で写真を学ぶ中で経験した高評会というトラウマ級の酷評体験も、今のメンタリティにつながっているという。

今回、mewdでは蒔埜ひなに、競技生活から芸能への舵の切り方、発信に込める美学、そして俳優としてやりたい役の話まで、あらためてじっくり聞いた。

バレー漬けの毎日と、スランプの始まり

蒔埜ひな
蒔埜ひな

蒔埜の学生時代は、かなりハードだ。本人いわく「今思えば、中学が一番きつかった」。朝練はもちろん、午前午後の1日練があり、遠征や練習試合など予定は詰め詰め。ほぼ毎週のように合宿がある感覚で、生活の中心はバレーボールだったという。

強豪校ゆえ競争も厳しい。全国大会(インターハイ)と冬の全国大会(春高)という大舞台がある中で、蒔埜は春高ではレギュラーではなくピンチサーバーとして出場した経験を語る。一方で、学年や時期によってはベンチに入れず、ユニフォームももらえず、スタンドで応援していた時期もあった。

そしてスランプは、中学から始まり高校でも再発。「多分バレーはダメなんだろうな」と自分で気づいていた、と率直に振り返る。

それでも続けられた理由を聞くと、返ってきたのは根性論ではなく、やけに筋の通った言葉だった。「スランプがあるから辞める、って簡単じゃないですか。中途半端な状態では諦めたくなかった。自分の納得のいくラインで、ちゃんと辞めたかった」。

それに、バレーは両親からの絶大なサポートも。整体に通わせてもらい、自主練用のコートまで用意してくれた。だからこそ「簡単に辞めるのはちょっと…」という葛藤に苛まれた。

最終的に蒔埜は、インターハイの試合が終わった後、監督へ「辞めます」と伝えたそうだ。辞めると決めていたからこそ、区切りの付け方にも自分なりの決着が必要だったのだろう。

芸大で写真を学び、心を折りにくくなった

蒔埜ひな
蒔埜ひな

バレーを引退した後、蒔埜が向かったのは芸大。専攻は写真だが、第一志望は絵だった。ただ、高校3年の夏に引退してから美術部に入り受験を始めたため「これじゃ受からない」と判断し、写真へ切り替えた経緯を明かしている。

写真に興味を持ったきっかけは兄の存在が大きかったとのこと。兄が持っていたソニーのカメラに触れたり、自分のスマホで写真を撮るのが好きだったり——その延長線上に、学びとしての写真があった。

芸大では写真だけでなく、社会的知識、色彩学、心理学など「全部つながってくる」周辺領域も学んだという。表現をセンスだけで終わらせない土台が、ここで作られていったのかもしれない。

そんな学生生活の中で、今も強烈に記憶に残っている出来事がある。それが「高評会」だ。

自分の撮った写真を大きなプロジェクターに映し出し、先生たちに酷評される場。良い点を見つけて伸ばす、というより「好みに合わない」と切り捨てられる感覚が強かったという。

「芸術だから正解も不正解もないのに、と思って。なので、安価で食べられるお寿司を高級寿司職人に食べてもらって評価してもらう、みたいな番組を見ると、今でも本当にぞっとします」

とはいえ彼女は、その場で完全に折れるタイプではなかった。「良くも悪くもこういうタイプ」と言い、褒められた部分だけを拾って「頑張ります」と切り替える。「刺さらない人がいるのは当然で、刺さる人も必ずいる」。そう言い切れる距離感が、蒔埜の強さだ。

TikTokは戦略より自分らしさ。「芋っぽさ」も残す

蒔埜ひな
蒔埜ひな

蒔埜の発信が面白いのは、数字を冷静に見ながらも、芯は「飾らないこと」に置いている点だ。

「狙ってやった動画ってバズらなくて。何がバズるかわからないから、数を出していく。楽しんでもらう、みたいな感じ」。

そして意識しているのは、見せ方のうまさに寄せすぎないこと。周囲のクリエイターの強みは理解しているが、自分まで同じ形に合わせたら「同じ部類」「同じコンテンツ」になってしまうと考える。

そこで彼女が手放さないのが「芋っぽさ」だ。「昔から芋っぽいのが抜けなくて。でも、それが良さっていうのも気づいてきた。何かの中に芋っぽさがあれば、自分らしさになるかなって」。

垢抜けたいという気持ちはゼロではない。それでも矛盾を抱えたまま、どこかに自分の匂いを残す。そのバランス感覚が、蒔埜の発信を単なる量産にしない。

俳優として、やりたいのは「新米刑事」。

蒔埜ひな
蒔埜ひな

今後やりたい役について聞くと、蒔埜は即答した。「新米刑事です」と。

実績のある刑事役の先輩がいて、その背中を見ながら学びつつ現場にも出る——未熟さと成長が同居する役どころに惹かれているという。最近話題になった作品名にも触れつつ、「たまたま」重なっただけで元々やりたかったと笑うあたりも、狙いすぎない彼女らしさが出ている。

そして、次に狙うのはミステリー系。加えて最近はラブコメにも興味が湧き、小学生の頃に観た作品を見返しているという。挙げたタイトルは『花より男子』や『ヒロイン失格』、そして実話を基にした映画『8年越しの花嫁』。有名どころをあまり観てこなかったからこそ、今になって吸収したい感覚があるのだろう。

「来たら何でもやりたい。対応できる役者になりたい」。

そう言い切りつつも、やりたい像は明確にある。新米刑事やミステリー、ラブコメなどジャンルをまたいで挑戦したい意欲が、次々と出てくる。

「誰かには刺さる」を信じる強さ

バレーで続けた時間も、芸大で浴びた酷評も、発信で試行回数を回してきた日々も、蒔埜の言葉には一貫して自分で納得するという軸がある。

スランプのまま辞めない。中途半端な状態で諦めない。周囲の上手な見せ方に寄せすぎて、自分を失わない。先生の好みに合わなくても、「誰かには刺さる」と言い切る。

芋っぽさも、未熟さも、伸びしろも——全部まとめて「自分らしさ」として抱えて前に進む。それが、蒔埜ひなの強さだ。彼女が次に纏う役柄が何にせよ、画面のどこかに「蒔埜ひなっぽさ」が残ることだけは、きっと変わらないだろう。

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